「トロッコ問題」は、「襲い掛かるトロッコを前に究極の2択を迫られる」という残酷な状況を想定する倫理学上の有名な思考実験ですが、何を目的とした実験なのか知っていますか
?今回は、「トロッコ問題」の本質とさまざまな作品におけるこれを用いた比喩表現についてご紹介します!
倫理学の思考実験:「トロッコ問題」とは?
そもそも「トロッコ問題」ってなに?という方に向けて簡単に説明します。想定する状況は以下のようになります。
『あなたは鉱山で鉱夫として働いています。いつものように作業していると、「暴走したトロッコがそっちに行ったぞ!すぐに逃げろ!」という荒々しい声が聞こえ、凄まじい速度で向かってくるトロッコが見えます。このまま行けばその先で作業している鉱夫は間違いなく死んでしまいます。』
『あなたは手元のレバーで進路を変えることに気付き、進路を変えようとしますが、変更した先でも別の鉱夫が作業しています。あなたはレバーを引きますか?』
「トロッコ問題」を考えるうえでのポイント
この思考実験の主なポイントは
- ①レバーを引くことによって間接的に人を殺めるという「罪の意識」
- ②分かれ道で作業する鉱夫の人数と価値を変えると、選択がどう変化するのか
この2点にあります。分かりやすく言うと、分かれ道の先の鉱夫があなたと全く面識がない人たちで人数も同じだとすればレバーを引かないのがほとんどだと思われますが、これを変化させて「恋人1人」と「無関係な100人の鉱夫」にしたり、「余命1年の善人」と「10人の犯罪者」にするということです。
つまり「トロッコ問題」という思考実験の本質は、「レバーを引くという精神的負担」、「人間の価値として質・量を判断する割合」という2つを天秤にかけて、回答者の倫理観や価値基準を判別することにあるわけです。
「トロッコ問題」を用いた比喩描写
そして、この「トロッコ問題」は人間の倫理観を問うという性質から数多くの作品で題材とされてきた歴史があります。
この問題への理解をより深めるためにいくつかピックアップしてご紹介します。
「アイ・イン・ザ・スカイー世界一安全な戦場」
この映画について簡単に説明すると、『凶悪なテロ組織をミサイルで一網打尽にする作戦を立てるも、その場にいる何の罪もない少女を巻き込んでしまう。優先すべきは「大義」か「個人」か』というものです。
「トロッコ問題」とかなり酷似した状況が設定されているため、「トロッコ問題」の本質を体感してみたいという方にはおすすめです!
HUNTER×HUNTER
日本が誇る有名マンガ「HUNTER×HUNTER」でも「トロッコ問題」を用いた比喩描写が存在します。この場面では、「息子と娘が誘拐されたが1人しか取り戻せない。
①娘②息子どちらを取り戻す?」といい問いに対して「答えられない」という選択を取った主人公・ゴンたちが描写されています。
このほかにも数多くの作品で「トロッコ問題」を含む思考実験の比喩が隠されているので、それに注目すると新たな発見があったりして非常に面白いです!
まとめ
今回は倫理学上の有名な思考実験である「トロッコ問題」について解説してみましたが、いかがだったでしょうか。これを機に他のさまざまな思考実験や学問に興味を持っていただければ幸いです。経済学の面白い思考実験も併せてご覧ください!
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