一見すると「答えがない・選べない」というパラドックスの要素をもつ「思考実験」。考えれば考えるほど思考の沼にハマってしまう、非常にユニークな魅力を秘めています。
今回はそんな「思考実験」のなかでも特に面白いものをご紹介していきます!
「物理学」の思考実験
「物理学」には、既存の法則に異議を唱える・新たな疑問を投げかけるということを目的とした思考実験があります。そんな思考実験について2つをピックアップしてご紹介します!
シュレディンガーの猫
物理学という学問が創設されて以来、「初めの条件が定められれば、その後の物質の状態や運動はすべて確定される」(決定論)という原則があります。
この話題を巡って、量子力学の始祖エルヴィン・シュレディンガーが提唱したのが「シュレディンガーの猫」という思考実験の存在でした。
物理学の常識である決定論を考える上で、「シュレディンガーの猫」というのはいったいどのような存在だったのでしょうか。
実験の内容は以下のようなものでした。(分かりやすいように一部を原典から改変して説明します。)
『まず、密閉された箱の中に生きた猫と50%の確率で毒が発生する装置を入れる。この時、観測者は箱のなかの様子を確認できない。1時間後に箱を開け、なかの様子を確かめる。』
これについて、あなたは実験後の猫の様子を実験前に確定させることができると思いますか?詳しくはこちらの記事をどうぞ!⤵
マスクウェルの悪魔
スコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マスクウェルが提唱した「マスクウェルの悪魔」は、仮想の悪魔によって物理現象がどのように変化するのかを考える思考実験です。
その思考実験の内容は以下のようなものです。
- 均一な温度の気体で満たされた容器を用意する。 このとき温度は均一でも個々の分子の速度は平均すれば同じだが、速いものと遅いものが入り混じっているはずである。
- この容器を分子がようやく通れるほどの小さな孔の空いた仕切りで2つの部屋A,Bに分離し、箱の中には分子1つ1つの動きを判別できる「悪魔」がいて、この穴を開け閉めできるとする。
- この存在は、AからBへは素早い分子のみを、BからAへは遅い分子のみを通り抜けさせるように、この穴を開閉するのだとする。
- この過程を繰り返すことにより、この存在は仕事をすることなしに、 Aの温度を下げ、 Bの温度を上げることができる。
これを実現できれば永久機関をも完成させられるとして話題になった実験ですが、いかにして決着がついたのでしょうか?詳しくはこちらの記事をどうぞ⤵
「哲学」の思考実験
「哲学」という学問には、小難しい・とっつきにくいというイメージを持っている方が多いと思います。
しかし、その本質は我々の思考や認知に則した、とても分かりやすく興味深い内容が多いです。そんな「哲学」を知る足がかりとなる思考実験をいくつかご紹介します!
水槽の中の脳
なかなか強烈な印象を受ける字面ですが、この「水槽の中の脳」は、私たちが生きている現実世界そのものに疑問を投げかける面白い内容です。
その不思議な世界観を醸す実験内容は以下のようなものです
『ある科学者が人から脳を取り出し、水槽に入った特殊な培養液に漬ける。脳と非常に高性能なコンピュータを繋ぎ、五感を完全に再現した仮想空間で目覚めた脳は、そこが現実であると錯覚する。私たちが生きているこの世界は本当に現実だと言えるのだろうか?』
この文章からは内容がよく分からないという方もいますが、個人的におすすめしたい映画「マトリックス」を見ればこのイメージがはっきりと分かるので、「マトリックス」の世界観と「水槽の中の脳」の関係について紹介する記事があるので参考にしてください。⤵
トロッコ問題
「トロッコ問題」は、「哲学」のなかでも特に人間の道徳や倫理観を考える「倫理学」という学問分野の思考実験です。
「襲い掛かるトロッコを前に究極の2択を迫られる」という残酷な状況を想定する倫理学上の有名な思考実験ですが、どのような内容なのでしょうか。それは以下のようなものです。
『あなたは鉱山で鉱夫として働いています。いつものように作業していると、「暴走したトロッコがそっちに行ったぞ!すぐに逃げろ!」という荒々しい声が聞こえ、凄まじい速度で向かってくるトロッコが見えます。このまま行けばその先で作業している鉱夫は間違いなく死んでしまいます。』
『あなたは手元のレバーで進路を変えることに気付き、進路を変えようとしますが、変更した先でも別の鉱夫が作業しています。あなたはレバーを引きますか?』
この問題の深いところは、鉱夫が「あなたの大切な人」や「犯罪者」だった場合に解答は変化するのかを考えるところです!あなたならどうしますか?詳しくはこちらからどうぞ⤵
テセウスの船
ドラマ・漫画で有名になった「テセウスの船」ですが、これはもともと哲学における思考実験の1つを指す言葉なんです。
そんな「テセウスの船」はどんなお話なのでしょうか。分かりやすくすると、以下のような話になります。
『テセウス(ギリシャ神話の英雄)がある島から乗ってきた船は、後世でも観光客でにぎわっていた。 その船はこれまでに何度も古くなった部品を継ぎはぎし、かつて使われていた部品は全て新しいものに 置き換わっていたため、見た目にはかなり新しいように見えた。』
『そこで誰かが言った。「この船は、もはやテセウスが乗ってきたものとは別物であり、「テセウスの船」とは呼べないはずだ。」しかし、別の者は「同じ設計図をもとに改築されてきたのだから、これは「テセウスの船」である。」と』
この「テセウスの船」問題にはいくつもの解釈があり、どれも強い説得力があります。詳しく知りたいと感じた方はこちらからどうぞ⤵
メアリーの部屋
「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、体験することはただ見聞きすることよりもはるかに多くのことを学べる。というのが一般的です。
しかし、本当にそうでしょうか?新たな学びがあるとすれば、それは何なのでしょうか。
この疑問に答えを出すべく提唱されたのが「メアリーの部屋」という思考実験で、内容は以下のようなものです。
『あるところに、すべてが白黒で色が全くない部屋の中で育ったメアリーという名の少女がいた。彼女は白黒の本を読み、白黒のテレビを見て世界中の出来事や知識を身につけていった。』
『白黒の世界で育ったメアリーは、「色」というものに強い関心を示し、視覚に関する物理的事実をすべて会得し、世界一の視覚科学者となっていた。さて、こうなった彼女に外の世界を見せるとどうなるのだろうか。「色」についてすべてを知る彼女は何かを新しく学ぶのだろうか?』
メアリーは新たな学びを得られるのか、また得られるとすればそれはどんな学びなのでしょうか。詳しくはこちらからどうぞ!⤵
まとめ
今回はいろいろな思考実験についてご紹介していきましたが、いかがだったでしょうか。敬遠していた学問に少しは興味を持っていただけましたでしょうか。
これを機に他の思考実験や雑学への興味を持っていただけたのなら幸いです。それでは!
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