みなさんは「マスクウェルの悪魔」という言葉を知っていますか?なんだか恐ろしい印象を受ける字面ですが、これはエントロピー増大説という熱力学の法則に疑問を投げかける思考実験のことを指す言葉です。
今回はそんな「マスクウェルの悪魔」の内容とエントロピーについて簡単に解説していきます。
エントロピーについて簡単に解説
エントロピーとは、簡潔に言うと「何らかの現象の起こりにくさ」を表す言葉で、日本語では「乱雑さ」などの表記が一般的です。
なぜこんなに曖昧な言い方をしたかというと、「エントロピー」はさまざまな分野にまたがって存在する概念であり、分野ごとに異なる定義が定められているからなのです。
つまり、「エントロピーが増大する=その現象が起こりにくくなる」ということになり、減少はその逆を表します。
次に、エントロピーの性質を掴んでもらうために「エントロピー増大説」を紹介します。
エントロピー増大説について
「エントロピー増大説」は、熱力学における考えの1つで「外部からの干渉がない限り、エントロピーには増加はあるが減少はあり得ない」ことを言います。
これは、常温のジュースに氷を入れると、始めのうちはみるみる氷が解けていきますが、徐々に解ける早さが緩やかになっていくことを考えれば分かりやすいです。
この現象をエントロピーを使って表すと、始めのうちは氷とジュースの温度差が激しく、ジュースの熱量がみるみる氷に奪われていきます(熱の移動が起こりやすい=エントロピーが低い)。
次第にジュースは氷の温度へと近づいていき、熱の移動が起こりにくくなっていきます。(=エントロピーが増大していく)
これは、外部の干渉(ジュースを温めたり、氷を途中で入れるなど)がなければ自然とそうなり、最終的にはジュースの温度が常温で一定(変化が起こらない=エントロピーが最大)となることが分かると思います。
「マスクウェルの悪魔」とエントロピー
この「エントロピー増大説」に疑問を投げかけたのは、スコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マスクウェルが提唱した「マスクウェルの悪魔」でした。その思考実験の内容は以下のようなものです。
- 均一な温度の気体で満たされた容器を用意する。 このとき温度は均一でも個々の分子の速度は平均すれば同じだが、速いものと遅いものが入り混じっているはずである。
- この容器を分子がようやく通れるほどの小さな孔の空いた仕切りで2つの部屋A,Bに分離し、箱の中には分子1つ1つの動きを判別できる「悪魔」がいて、この穴を開け閉めできるとする。
- この存在は、AからBへは素早い分子のみを、BからAへは遅い分子のみを通り抜けさせるように、この穴を開閉するのだとする。
- この過程を繰り返すことにより、この存在は仕事をすることなしに、 Aの温度を下げ、 Bの温度を上げることができる。これは「熱力学第二法則」に矛盾している。
マスクウェルの悪魔への解答
この実験が成り立つのであれば永久機関を作ることさえできるとして、1世紀以上にもわたって考察されたのですが、その過程で現代の情報科学につながる重要な知見が得られました。
それは、「観測(厳密には観測した情報の記憶を消去する過程)」がエントロピーを増大させるということです。
この説明にはかなり専門的な内容を含むので省略しますが、詳しく知りたいという方はこちらのPDFが参考になります。
まとめ
今回は「エントロピー」について解説してみましたが、いかがだったでしょうか。かなり難しい内容を含むので、理解しきれなかった部分もあるかもしれません。このほかにもさまざまな思考実験や雑学などを紹介しているので、ぜひご覧になってください!
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