”ラプラスの悪魔”という言葉をご存じでしょうか?
字面からは何やら恐ろしい印象を受けますが、これはとある“思考実験”を表す言葉なんです!
今回は、この世のすべて知る仮想存在「ラプラスの悪魔」について解説していきます。
思考実験とは?
そもそも“思考実験”ってなに?と思った方に向けて簡単にご説明します。
思考実験とは、実証実験が難しい事象(例えば倫理に反するもの、概念そのものなど)について、さまざまな分野・角度から空想上で検証を行うというものです。
有名なものだと「トロッコ問題」や「シュレディンガーの猫」などがあります。
それらの詳しい解説についてはこちらからどうぞ⤵
ラプラスの悪魔とは?
思考実験について理解ができたところで、本題の“ラプラスの悪魔”に入っていきましょう。
“ラプラスの悪魔”は、18世紀の天才学者ピエール=シモン・ラプラスによって提唱された、“決定論”に関する思考実験です。※「決定論ってなに?」と思った方も多いと思うので、それについては次項で解説します。
彼が提唱した「ラプラスの悪魔」とはどのような内容だったのでしょうか。具体的には以下のような内容です。
『もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性(悪魔)が存在すると仮定する。』
『この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。』
正直、何を言っているのか分からないという方も多いと思うので、事項の「決定論」の項で詳しく解説します。
決定論とは?
“決定論”は、ニュートン力学(古典物理学)の原則の1つで、「初めの条件が定められれば、その後の物質の状態や運動はすべて確定される」というものです。
分かりやすく説明すると、以下のようになります。
まずは「初めの条件」の設定です。例えば①斜面の角度が60℃の滑らかな坂に、重さ3㎏の鉄球を置くや、②20℃の水を100g用意し、ガスコンロで30分間加熱するなどがそれに当たります。
この条件を設定した時点で、①であれば「鉄球はある程度の早さまで加速し、等速直線運動をする」という結果が確定しています。
②であっても、「水の温度は100℃まで上昇し、○○㎎の水が蒸発する」という結果が確定しており、計算で求めることもできることもできるというのが「決定論」となります。
学校で習った理科の授業を思い出してもらえれば分かりやすいですね。
このように、「条件が定まれば、わざわざ実験する必要もなく結果が分かっているというのは当たり前のように思う。」
という認識そのものが「決定論」という言葉が意味するところです。
「決定論」に関しては、先ほども紹介した「シュレディンガーの猫」でも解説しているで、興味があればぜひ!
決定論とラプラスの悪魔
これを踏まえたうえで、“ラプラスの悪魔”を考えてみましょう。
ラプラスの悪魔は、
『もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性(悪魔)が存在すると仮定する。』
『この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。』
という内容でした。冒頭部分は”決定論”における「初めの条件が定まれば」に該当し、”データを解析できるだけの能力”は、「その後の物質の状態や運動を計算できる」という意味で解釈できます。
つまり「ラプラスの悪魔」は、
『全ての運動や状態変化の法則が明らかになった時、人間は未来を完全に見通す存在(いわば神)になれるのではないか』
という議題の提示でもあるのです。
ラプラスの悪魔は現れるのか?
なかなか興味深い話でしたが、みなさんはこれについてどう考えますか?
「ラプラスの悪魔」は将来的に存在しうるのでしょうか?
実は、このことについては20世紀初頭に登場し、人類の科学を飛躍的に発展させた学問「量子力学」によって答えが出ています。
ここで説明するには長くなってしまうので、気になった方は再三に渡る紹介になりますが、こちらの記事へどうぞ!
まとめ
今回は、古典物理学における思考実験「ラプラスの悪魔」についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
これを機に”物理学”という学問の面白さや他の思考実験について興味を持つきっかけになれば幸いです。
今回の話を「面白い!」と感じた方であれば「エントロピーに関する思考実験」や経済学の理論の1つ「ゲーム理論」もおすすめなので、ぜひ併せてご覧ください!⤵
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