記憶には、覚えは早いがすぐに思い出せなくなってしまう短期記憶と、初めはなんとなくでも徐々にその定着が強固になっていく長期記憶の2種類があるとされています。とはいえ、

その言葉自体は知ってるけど、どういうメカニズムがあるのかは詳しく知らない
という方も多いのではと思います。
今回はそんな人間の脳の仕組み「短期記憶と長期記憶」について分かりやすく解説していきます!
短期記憶・長期記憶とは?

「短期記憶・長期記憶」とは、リチャード・アトキンソン(Richard Atkinson)とリチャード・シフリン(Richard Shiffrin)の2人の博士によって提唱された、「記憶には2種類の貯蔵スペースがある」という、記憶の2種貯蔵庫モデルで使われる用語です。
その性質は前述のとおり、吸収も早いが抜け落ちていく早さも早い短期記憶と、定着まで時間はかかるが長期間根強く残る長期記憶に分けられます。
系列位置効果
記憶がこの2つのどちらになるのかは「いつ・どのタイミングで記憶しようとしたか」と「思い出しやすさ」の関係を考える系列位置効果によって振り分けられます。
それを左右するのが初頭効果と新近効果と呼ばれるものです。
簡単に言うと、例えば本を読むときであれば目次やプロローグのような物語の初めに当たる部分の記憶が初頭効果、物語の終盤・エピローグなどの物語の終わりに当たる部分の記憶が新近効果によるものとなります。
これらについては次の項で詳しく説明するので、今は「そんなものがあるのか」という認識で大丈夫です!
なぜ記憶は短期記憶・長期記憶の2種類に分けられるのか?

先ほど系列位置効果の項でも軽く触れましたが、皆さんは新しい環境や人間関係、新しく始めた趣味などについて、

初めのほうと最近のことはよく覚えてるけど、その間のことはなんとなくしか覚えてない
というイメージがあるのではないでしょうか。実はこの動作の初めに当たる記憶が主に初頭効果、動作の終わり際に当たる部分の記憶が新近効果によって記憶に残りやすく、前者は長期記憶、後者は短期記憶として定着しやすいと言われています。
新近効果による短期記憶の形成
新近効果による最近の出来事の記憶は常に更新され続けており、短期間の記憶として忘れられていく仕組みになっています。「新近」という文字からもその意味は掴みやすいのではないでしょうか。
なぜ古くなった記憶が忘れられていくのかということについては、人間の脳はコンピュータなどと同様に、容量に限りがあったり、整理する時間がないと活動が低下したりしていきます。
そのため一時ファイルとして記憶に留められている出来事も、必要がないと判断されれば自動的に整理・削除され、脳が十分に活動できる状態を維持できるような仕組みになっています。
このような順序を経て、結果的に最近の記憶しか残らないというメカニズムで成り立っているわけなのです。
日々の積み重ねによる長期記憶の形成
なぜ初めの部分が長期の記憶として分類されやすいのかというと、これは普段の生活を思い出してもらえれば分かりやすいです。
例えば通勤の際に

道が混んでるし、いつもは使わないこっちの道で行こう

喉乾いたし、コンビニに寄ってから会社に行こう
などと考えて普段の道を逸れたり、

昨日はほとんどデスクワークだったけど、今日はほとんど会議だ
のように、毎日決まった生活リズムの中にも細かな変化はつきものです。しかし、朝起きた後・家を出てからなどのの数分間はほとんど変わらない行動をとるのが普通です。
こうしてほとんど変化のない初めの部分の積み重ねが徐々に記憶に刷り込まれていき、五感情報が反芻していくことで長期の記憶として定着していくというわけなのです。
これはほんの小さな動作も同様で、例えば「なぜか教科書の表紙だけは覚えている」「曲の出だしだけは数十年たった今でも忘れない」といったことは、それらの動作を開始する際に目についたり手で触れていることが多いためなのです。
まとめ
今回は、長期記憶と短期記憶の概要とメカニズムについて紹介してみましたがいかがだったでしょうか。もしこうした脳のメカニズムについて興味がありましたら、ぜひ他の記事も参考にしてみてください!
コメント